※ネタバレを含みます。
私、鬱映画、鬱漫画、鬱アニメが好きでして、見る時間があったので前から気になっていた『子宮に沈める』(2013年、監督:緒方貴臣)を鑑賞しました。
鬱映画『子宮に沈める』のストーリー・感想を書きつつ、この映画の基となった【大阪2児餓死事件】についても、考えていきたいと思います。
子どもがいらっしゃる方は、めちゃくちゃ鬱になりますので、鑑賞はおすすめしません!
ストーリー(ネタバレあり)
主人公は二人の幼い子どもを育てる 母親。
彼女は編み物をしたり、かわいいお弁当を作ったり、2人の子どもを甲斐甲斐しく育だてていました。また、生活も豊かでゆとりある生活でした。

ただ、そこに夫の姿はなくいつもワンオペ育児をしているのでした。
夫は夜遅くに家に帰ってきたと思ったらすぐに「仕事に戻る」といって出かけていく。子どもたちの様子を見ることもなく…。
ある時、母親はそんな夫に本当に愛されているのかわからなくなり、また日頃の育児のストレスからか、夫を激しく叩き責め立てます。
その後、離婚し、夫とともに4人で暮らしていた家から引っ越し、子どもと3人で小さなアパートに住み始めます。
そして、子どもたちを養っていくために資格の勉強をし、無事就職し子どもたちを保育園に預けて仕事を始めます。
ただ、保育園に入りたての子どもたちは熱を出してしまい、思うように働くことができません。
やがて、夜職に就く母親。夜は子どもたちをどこかに預けることもなく、部屋に置き去りにし出かけていく。
そして、夜遅くに交際相手をアパートに連れてきて、子どもたちが寝る部屋のすぐ隣で性行為をするような有様になってしまいます。このあたりから、男に依存するようになっていきます。
2~3歳の姉はその様子を見て、0~1歳の弟で真似をしたりしてしまいます。そして、部屋の中はごみやモノで散らかり放題。どんどんと生活が荒れていっていることがうかがえます。
そして、最後の食事であるチャーハンとともに子どもたちを置いて母親は出て行ってしまいます。部屋のドアや窓に粘着テープを貼り、子どもたちが外に出られないようにしたまま。

そのためトイレにも行けず、姉は漏らしてしまいます。おそらく弟のオムツはそのままの状態。
まだまだ赤ちゃんの弟は泣きじゃくりますが、姉はそんな弟を小さいながらに一生懸命あやします。
また、姉はお腹を空かせているであろう弟にミルクを作ってあげたりします。しかし、まだまだ赤ちゃんに毛が生えた程度の姉は、床にこぼれたミルクの粉を冷たい水道水で溶かして作ります。そのためか、弟もミルクを飲みません。
姉もお腹が空いて部屋中食べ物を探し回ります。そして見つけた缶詰を開け方も分からず、包丁で開けようとします。
やがて、弟は力尽きてしまいます。そんな弟を見ても、姉は死んだということも分からず、暗闇の中、にぎやかさを演出するためか砂嵐のテレビをつけて「はっぴばーすでーとぅーゆー♪」と大声で弟のために歌います。
ピンポンが鳴り、インターホンを取ろうとしますが高くて取れず、椅子を使い取りますが時すでに遅し。行政や警察だったのでしょうか。外からの助けも届かない。
食べ物もどんどんなくなり、ごみを漁ったり、冷蔵庫の調味料を食べたり、粘土を食べたりして姉は何とか生きながらえます。

そして、何日経ったのか母親が帰宅します。姉は「ママ遅いよ~!」と言って母親にしがみつきます。
そして、姉は弟が「動かないよ~!」と伝えますが、母親は終始無言のまま死んでしまった弟に沸いている蛆虫を取り除きます。
母親はお風呂にお湯を沸かし、生き残った姉もお風呂場で殺害。弟の顔にビニール袋をかぶせガムテープでぐるぐる巻きにします。
部屋を片付け、妊娠しているのか、映画の冒頭で編み物をしていた編み棒で自ら子どもを堕ろします。
その編み棒で作っていた赤いマフラーを死んだ姉弟に巻いてその様子を見ながら母親は泣きます。
母親は最後に死んでしまった二人をレジャーシートとガムテープで包んで呆然と、開け放った窓の外を見つめる。

おわり
感想
もう気分最悪でした。鬼滅の映画を見に行った行き帰りの電車で見てたんですが、鬼滅の感動を忘れるぐらい。なんでそんな時に見たんだ…。
特にきつかったのが、弟の泣き声。もうかわいそうすぎて、耳をふさぎたくなりました。
上の子は映画の子よりも、色々できたり男女が違ったりしたので重ね合わせることはあまりなかったのですが、下の子についてはうちの次男が同じぐらいの年齢で男の子で、めちゃくちゃ重ね合わせてしまって辛すぎました。
鬱映画は好きなんですが、これは子どもを持つ親には辛すぎました。特に0~3歳ぐらいの子どもがいると感情移入してしまい2~3日は引きずります。

この母親なんやねん!!こいつふざけんな!!なんで、一番大切な子どもを置いて男のところにいけんるんや!!というのが私の感想でした。
【大阪2児餓死事件】について調べてみた
この映画の基になったのが2010年に起こった【大阪2児餓死事件】。鬱状態を引きずっていた私はこの事件について知りたくなり、「ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書) 」(2013年、著者:杉山春)を読みました。
この本を読むまでは「母親クズ過ぎる!あり得ん!」と思っていました。しかし、この犯人である母親の生まれ育った環境、周囲の人間の対応を知って、「一概に『母親だけの責任』と言えないのではないか。」という考えに至りました。
事件内容
2010年7月30日に発生した大阪府大阪市西区のマンションで2児(3歳女児と1歳9か月男児)が母親の育児放棄によって餓死した事件。
母親は6月9日に最後の食事を部屋に置き、7月29日までの間外出し部屋に戻ってくることはなかった。
母親の生まれ育った環境
この犯人である母親(以下、A)も過去にネグレクトを受けていました。
実父は高校教師でラグビー部の熱血顧問をしており有名な人だそうです。そして、そのラグビー部でマネージャーをしていたのが実母です。つまり、教師と生徒の恋愛ですね。結婚は実父が26歳、実母が20歳のときだったそうです。

実母も家族に恵まれず、一時期母親が出ていったりもしていたようです。また、頼る実家もない、義実家もない。そのためか、実母も同じく自分の子ども3人(Aを含む)を放置し、家を出て行ったことがあるようです。
幼少期の愛着形成って本当に大事なんですね。今までもいろんな情報から大事っていうことはわかっていましたが、この本を読んで一層大事さが理解できました。
Aの家族は代々にわたってネグレクトが受け継がれて、このような悲惨な事件が起きてしまいました。
程度は違いますが、私自身が母にされて嫌だったことを子どもにしないように心がけて育児をしているのですが、体調不良の時や気分がすぐれないときに母と同じことをしてしまう時があります。
やはり、幼少期に受けた記憶はかなり強く体や記憶に染みついているのでしょうか。
しかし、過去を理由にするのではなく今育児をしている私が反省し、自分を変えていかなければいけないんですよね。
負の連鎖はいつか誰かが断たなければいけない訳ですが、それにはかなりの努力と強い意志が必要、子どもを育てるということはそういう努力も大事なんですね。

また、Aの実父は熱血顧問だったようなので、あまり子どもたちにも関わってなかったのかもしれません。
そのような環境ではAになんらかの愛着障害が起きるのも無理はないのかな、と思いました。
周囲の人間
まずAの元夫B。
「Bはなにしとったんや!」というのが本当に疑問でした。
離婚する以前からAは子どもたちを置いて家を出て行ったり、借金をしたりと問題行動が多々あったようです。そんなAが子どもたちを育てれるような状態ではないことは、Bも分かってたはずです。
また、近くにBの両親が住んでおり、離婚の話し合いにも両親が同席したようで、話し合いもすべて両親の言いなり。そして、養育費も払ってなかったとのこと。
Aが浮気をしてBと離婚するに至ったのですが、Aに対する怒りはわかります。でも、子どもたちは守らなあかんやろと。

次にBの両親、Aの実父。
離婚後、Aが水商売をしながら子どもたちを育てているということを知っていたということです。
夜の仕事をしながら子どもを2人も育てるのなんて、かなりハードな状況じゃないですか。Aは自業自得ではあるけど、子どもたちも大丈夫なのかと心配になりますよね。
でも、この人たちは助けようともしなかったんです。
離婚の話し合いでは、話し合いの場にいないAの実母(精神疾患あり)が子育ての手助けをするという風に勝手に決めてるし、子どもの幸せをまったく考えていない。自分たちのことばっかり。
極め付きはAに誓約書なるものを書かせています。内容は以下の通り。
- 子どもは責任をもって育てます。
- 借金はしっかり返していきます。
- 自分のことは我慢してでも子どもに不自由な思いはさせません。
- 家族には甘えません。
- しっかり働きます。
- 逃げません。
- うそはつきません。
- 夜の仕事はしません。
- 連絡はいつも取れるようにします。
こんなの書かされたら、本当に行き詰ったときどうすればいいのでしょう?家族は頼れないんです。

Aを擁護するつもりはありませんが、この親たちはいったいどういう神経してるんだ?
Aははじめ、若いのに一生懸命な母として周囲でも評判が良かったようです。育児サークルにも参加したり、布おむつをこだわって使ったり。(私なら面倒くさすぎて絶対しない。)
Aはよい母でいなければいけないという意志が強かったのかもしれません。そのため、うまくやれていない自分を隠そうと、行政の支援をうまく活用できなかった、ガムテープで子どもたちを周囲から隠そうとした。
助けさえ求めることができれば、違っていたのではないかと思います。でも、いい子であろう、いい母親であろうと思う意志が強くそれができなかった。
Aは絶対的に悪ではあるんですが、そういう意志にさせたのは、環境や周囲の人間による要因も大きいのではないか、と思いました。
育児の大切さを改めて実感
この映画、本から、育児って本当に大切なんだなと実感しました。
小さいことの積み重ねが、その子の人格を形成して、さらにその子の子へも影響を与える。こんなに怖いことはありません。
自分の行動が将来の子どもたちに影響を与えていると思うと、背筋が伸びる思いです。日々真剣に子どもたちに向き合い、間違ってしまった場合は反省し謝りたいと、固く心に決めました。
かなり今回は重めの内容でした。まだ引きずってますね~。
それでは、シーユーバイバイ!
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